血統入門【番外編】日米欧の違いはぜひ知っておいてほしい

競馬の血統について話をされるとき、

必ず出てくるのが「地域ごとの血統の特徴のちがい」です!

 

もちろん同じ地域でもスプリンターもいればステイヤーもいるし、

芝馬もいればダート馬もいます。

ただ、サラブレッドの遠征が活発になった今は数百年前の昔ほどではないにせよ、

それでも「地域ごとの競馬のちがい」というのは今でも大きく、

それにより「地域ごとに発展する血統と衰退する血統」も当然異なってくるわけです。

 

2020年現在、世界の様々な国で競馬が行われていますが、

血統の世界では主に「日本」「米国」「欧州」「その他」という感じで分類をされますね。

 

特にこの考え方は、血統評論家の亀谷さんの「血統ビーム」で有名な分類です。

「競走馬の持つ能力は一定ではない」という名言をよく予想番組などでお話されていますが、

本当にその通りだと思います。

 

日本、米国、欧州の競馬は、それくらい特徴が異なるのです。

(まあ、もっというと日本国内でも芝の短距離〜長距離、ダートの短距離〜中距離という種目があって、

これらはまるで方向性の異なった適性が求められます。)

 

ではなぜこの3つの地域で違いが生まれたのか。

数百年前に時間をさかのぼって見てみることで、

納得の理由が見つかります。

今から一緒に見ていきましょう。

 

 

■欧州のざっくり競馬史

順番的に、最も古い時期から始まる欧州の競馬から話を勧めて行きたいと思います。

 

16世紀に「時をもどそう!」ということで、

遡ることおよそ500年前。

当時のイギリスでは、王侯貴族の「娯楽」と「名誉」の証として、

競馬は存在していました。

 

この時代、イギリスの競馬で主流だったのは「ヒート競争」というマッチレース。

「ヒート」というのは予選のことで、

1日に何度も予選競争を走ってチャンピオンを決定するという、

非常にタフな競馬が当たり前の文化でした。

 

加えて、このころは起伏に富んだ自然の原野のコース上での、

4マイル(約6,400m)以上にもおよぶ長距離のレースが主でした。

 

17世紀に入り、競馬は単なる「娯楽」だけではなく、

盛んに「馬産」についての研究が行われるようになりました。

しかし以前記したように、この頃のイギリスの馬産は、

あくまでも海外の血を取り入れるのではなく、

国内の「保守本流」の純粋なイギリス血統を守るという考え方のもとに行われていたのです。

17世紀の後半に、三大始祖の一頭バイアリータークが、

オスマン・トルコ帝国からイギリスにやってきます。

 

18世紀になって、

三大始祖の子孫である「エクリプス」「マッチェム」「ヘロド」の時代になり、

その他にも生涯無敗で種牡馬としても大活躍した「ハイフライヤー」、

記念すべき第一回の英ダービーを制した「ダイオメド」など歴史に残る名馬が次々に登場します。

 

レースは依然として重い芝質のコースで行われ、

かつ成熟した5歳以上の馬が長距離のコースを走るという形式が主流でした。

 

その後ヒート競争という方式や「長すぎて観戦には退屈な競争距離」という伝統的であった競馬の方式に少しづつ民衆が疑問を示し始め、

段々と2400〜3000mの距離の競争が主流になっていったのです。

 

 

・・・こういったイギリスを中心とした過去の欧州の競馬の歴史を見ると、

「欧州血統はスタミナがあって長距離と重い芝の適正が高い」という理由が、

すっと腑に落ちる感覚を持ってもらえると思います。

 

伝統と名誉を重んじる英国紳士たちが競争馬に与えた「強い馬」の条件とは、

「重い芝の上で長い距離を1日に何度も走って勝ち抜けるタフさ」

という実に過酷なものだったのですね。

 

■米国のざっくり競馬史

米国の競馬もまた、アメリカという国の成り立ちと共に誕生し、発展してきました。

 

時は17世紀。

入植したイギリス人によってアメリカの地で競馬がスタートしました。

当時イギリス人たちが開拓し競馬を行おうとした地域は、

深い森林が生い茂っている土地でした。

 

土地が貴重で道が狭く、

コースも短距離を想定して作らざるを得ないような環境のもとで、

競馬が行われていったのです。

 

ちなみにイギリス人が開拓している頃のアメリカには、

土着の競争馬というのは存在しなかったと言われています。

イギリスの競争馬や繁殖牝馬が土台となって、

競馬や馬産が行われていきました。

つまり、もとを辿れば同じ血統に行き着く、

というのは当然のことという訳ですね。

 

またアメリカといえばビジネスの国。

欧州の「娯楽と名誉の競馬観」とは異なり、

競馬という文化を通じていかにマネーを動かしていくか、

という考えがアメリカ人たちの競馬観でした。

 

そこでは「馬が5歳になって成熟してから走らせよう」なんて考えが流行るはずはなく、

「いかに早く出走させて賞金を稼ぎ、馬代金をPayするか」という考えのもと、

「早熟な馬たちによる2歳戦」が主流となっていきました。

 

そしてコース。

こちらも手入れに膨大な手間とお金のかかる芝コースではビジネスとしての効率が悪い。

ということで「一年中条件が大きく変わらず、手入れも比較的かんたんなダートコース」が重宝されていきます。

 

距離についても非常にビジネスライク。

「お金を効率よくうごかす為には、開催日あたりのレース数を増やしたほうが良い」

ということになって、

「じゃあ早く回転させられるように短距離のレースを増やそうよ」という考えに至ります。

 

 

・・・よくアメリカ血統は「早熟」「ダート」「短距離」という特徴が挙げられますが、

その理由がお分かりいただけたことと思います。

 

主にアメリカの競馬で求められる強い馬とは、

「短距離のダートコースでスタートダッシュを決めてポジションをとり、そのままゴールまでなるべく失速せずにスピードを持続できる馬」

だったのです。

それが今もなお続いている、ということなんですね。

 

■日本のざっくり競馬史

日本の競馬は1862年の幕末の時代、

横浜の外国人居留地で初めての開催が行われたと言われています。

 

直後に明治となって「文明開化」の時代を迎え、

競馬は競馬先進国でもあるイギリスを中心とした欧米列強からの外賓を歓迎するため、

国策として発展していきました。

 

そして時代は流れ、日本は世界を相手にした戦争へと進んでいくことになります。

日清・日露戦争では、「大陸進出」を図る上で、

広大な原野が戦闘の舞台となるため、

「良質な軍馬」の改良と育成が必要となっていきます。

 

そこで「軍馬の改良研究には競馬により優れた馬を選出していくことが近道である」

という事になり、

ここでも「国策」として、競馬が国に奨励されて発展していくのです。

 

つまり日本の競馬は「娯楽」でも「ビジネス」でもなく、

「欧米列強の影響」と「戦争のための馬質改良」がその発展の背景としてあったのです。

 

第二次世界大戦の最中でも、

日本の競馬の灯火は消えることなく、

細々とではあっても開催されて1941年の三冠馬セントライト、1943年の名牝クリフジといった、

競馬史に残る名馬を生み出しています。

 

戦後、日本の競馬は経済と共に、急速な復興を見せます。

トキノミノル

スピードシンボリ

シンザン

ハイセイコータケホープ

トウショウボーイテンポイントグリーングラス

ミスターシービーシンボリルドルフ

オグリキャップ

など、日本のそれぞれの時代の人々を熱狂させたスターホース綺羅星の如く誕生しては、

ターフを去っていきました。

 

戦争により発展し、そして皮肉にも戦争に翻弄されながらも、

競馬という文化の灯火を当時のホースマンが守り抜いたからこそ、

今日の日本の競馬が有るのですね。

本当に感謝の気持ちでいっぱいになります。

 

それにしても日本人というのは、

本当に優れた文化を自国に取り入れることと、

娯楽を発展させ定着させることが上手な民族だなあとつくづく思いますね。

 

私は海外に旅行をしたときに、

改めて日本の「食文化と娯楽施設の幅広さとレベルの高さ」を痛感しました。

これだけ多くの国の飲食店が高いレベルで揃い、

多くの種類と数の娯楽施設がある国は他にないと思います。

 

競馬においても同じで、

日本は海外の血統やレース形態などをうまく取り入れ、

独自の競馬文化を発展させて来ました。

 

これだけ高いレベルで様々な距離の芝・ダートチャンピオンを生み出し続けていることが、

日本人の文化の吸収と昇華の秀逸さの証となっていますね。

 

 

今後はより「日本血統」という存在が確立されていくことになると思います。

 

特に時計の出る芝マイル〜中距離において、

スピードと切れ味を発揮するという点においては、

日本の一流競争馬は世界最強です。

 

ロンシャンの凱旋門賞ではなかなか勝てなくても、

府中のジャパンカップでは海外の一流馬にも絶対に負けない。

 

それが、今の日本の競争馬の強さなのです。

 

 

いかがでしたでしょうか。

これから優れた種牡馬たちのことを書いておく上で、

絶対に知っておいてほしい国と競馬の違いをざっくりですが書いてみました。

 

乱文ではありますが少しでも参考になれば幸いです。

 

では、また。

第3回もぜひ御覧ください(^^)