血統入門【第23回】革命者を超えたサドラーズウェルズ(後編)

イギリスとアイルランドで計14回。

そしてフランスで 3回の計17回リーディングサイアーとなったサドラーズウェルズ

 

古の大種牡馬ハイフライヤーの更新不可能という記録を塗り替え、

革命者セントサイモンを超えたサドラーズウェルズは、

その産駒たちもやはり種牡馬として非常に優れ、

欧州を中心に「サドラーズウェルズ系」の大系統を築いていきました。

 

一方、競走馬時代にサドラーズウェルズの成績を大きく上回っていた僚馬、

エルグランセニョールは、

その後スーパーホーネット」の父でもある「ロドリゴデトリアーノ」以外に、

後継となる種牡馬を残せませんでした。

 

古くはファロスと全弟フェアウェイの成否もそうですが、

種牡馬の成功と言うのは本当に分からないものだと感じます。

 

いまや欧州競馬の支柱であるサドラーズウェルズの血。

今回はその繁栄の様子を見ていきましょう。

 

サドラーズウェルズの後継種牡馬たち 

 

フランケル (競走馬) - Wikipedia

 

 

サドラーズウェルズは実に60頭以上のG1ウィナーを輩出しました。

地域が異なるので単純比較は出来ませんが・・・

日本のサンデーサイレンスディープインパクトがそれぞれ40頭前後のG1ウィナー輩出という成績ですから、

その凄さが分かります。

 

特に英国のクラシックレースや愛ダービーキングジョージ凱旋門賞と言った、

芝の王道レースで素晴らしい成績を上げています。

 

以下にWikiさんから産駒の一覧をお借りして、

血統の繁栄を語る上で重要な活躍馬を抽出してみました。

まずは、サドラーズウェルズ系としてはこれを押さえておいてほしいと思います!

 

【1986年産】
オールドヴィック(アイリッシュダービージョッケクルブ賞

インザウイングスコロネーションカップサンクルー大賞ブリーダーズカップ・ターフ

 →この馬は凱旋門賞キングジョージにも出走しましたが、

 そこでは満足のいく結果を残せず、英・仏のチャンピオンホースとはなれませんでした。

種牡馬としては9頭のG1ホースを輩出していて、中でも1996年のジャパンカップを勝ったシングスピールが日本でも馴染みの深い産駒です。

シングスピールロゴタイプなどを出したローエングリンや、「アサクサデンエン」の父であり、オークスシンハライト(父ディープインパクト)」や「シャケトラ(父マンハッタンカフェ)」などの母の父となっています。

 

【1987年産】
サルサビル(マルセルブサック賞、1000ギニーエプソムオークスアイリッシュダービーヴェルメイユ賞

 

【1988年産】
オペラハウスコロネーションカップエクリプスステークスキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス

→日本で種牡馬となり、G1を7勝した世紀末覇王テイエムオペラオー、2冠馬メイショウサムソンなどを輩出しましたが、この2頭は後継種牡馬を輩出出来ておらず、残念ながら父系としては衰退してしまいそうです。

母の父としてはメジャーエンブレム(父ダイワメジャー)」や「レオアクティブ(父アドマイヤムーン)」などを出しています。

 

【1989年産】
エルプラド(ナショナルステークス)

→この馬は少し変わり種で、自身は欧州でナショナルステークスなどを勝って競走馬として活躍しましたが、

引退後はアメリカで種牡馬となりました。

 

産駒としてはジョーハーシュ・ターフクラシック招待、セクレタリアトステークスなどを勝ったキトゥンズジョイトラヴァーズステークス、ホイットニーハンデキャップ、ドンハンデキャップなどを勝ったメダグリアドーロ種牡馬として成功しています。

キトゥンズジョイの系統は特に芝に強い適正を見せて、

ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフなどを制して日本でも繁殖牝馬としての活躍が期待される「ステファニーズキトゥン」や、

エクリプスステークスインターナショナルステークス、愛チャンピオンステークスクイーンエリザベス2世ステークスなど欧州の芝戦線で活躍している「ロアリングライオンなどを輩出。

日本でも「ダッシングブレイズ」や「ジャンダルム」など芝適性の高い産駒が活躍していますね。

 

メダグリアドーロはなんと言っても、

アメリカでG1を5連勝した女傑レイチェルアレクサンドラの存在が際立ちますね。

芝にも適正のある系統ですが、基本的にはダート適性の高い産駒が多くアメリカを中心に活躍馬を出しました。

 

【1991年産】
カーネギー凱旋門賞サンクルー大賞

凱旋門賞を制した名馬ですが、種牡馬としては成功しているとまでは言えない感じですね。日本で種牡馬生活を送りました。

オールカマーを勝った「ホオキパウェーブ」や阪神ジャンプSを勝った「マヤノスターダム」を出しています。

そして母の父として、「モーリス」を出しました。この馬を元にその血を繁栄させられるかどうか、楽しみですね。

 

【1995年産】
ドリームウェルジョッケクルブ賞アイリッシュダービー

→なんか聞いたこと有りませんか?

有馬記念ダイワスカーレットの2着に激走した「アドマイヤモナーク」の父です。

 

【1996年産】

モンジュージョッケクルブ賞アイリッシュダービー凱旋門賞タタソールズゴールドカップサンクルー大賞キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス

凱旋門賞エルコンドルパサーと激闘を繰り広げたフランスの名馬です。

自身も産駒もクラシックディスタンスに非常に高い適性を見せていて、

 ●ハリケーンラン凱旋門賞キングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークスアイリッシュダービータタソールズゴールドカップ
 ●モティヴェイターレーシングポストトロフィーエプソムダービー

凱旋門賞を連覇した名牝トレヴの父です。

 ●オーソライズド(レーシングポストトロフィーエプソムダービーインターナショナルステークス

 ●フェイムアンドグローリー(クリテリウムドサンクルー、アイリッシュダービー、タターソルズゴールドカップコロネーションカップゴールドカップ
ジュークボックスジュリー(アイリッシュセントレジャー
 ●セントニコラスアビーレーシングポストトロフィーコロネーションカップ3連覇、ブリーダーズカップ・ターフドバイシーマクラシック
 ●キャメロットレーシングポストトロフィー2000ギニーエプソムダービーアイリッシュダービー

 →初年度産駒から愛ダービー馬「ラトローブ」やベルモントオークス馬「アテナ」が出ていて、

先々が楽しみな種牡馬です。

 

【1998年産】
ガリレオエプソムダービーアイリッシュダービーキングジョージ6世&クイーンエリザベスダイヤモンドステークス

→ヨーロッパの競馬を席巻している、サドラーズウェルズの筆頭後継種牡馬です。

この馬は後に別途詳細に書いていきたいと思います。

血統も素晴らしく、母アーバンシー凱旋門賞を勝った一流馬でしたが、

繁殖牝馬としては超一流でガリレオの他にも、

2000ギニー、ダービー、凱旋門賞などG1を6勝したシーザスターズ(父ケープクロス)」

伊愛でG1・2勝の「ブラックサムベラミー(※後述、父サドラーズウェルズなどを輩出しています。

 

ガリレオの産駒や孫たちは、近年の欧州競馬の主役となっていて、

 ●テオフィロデューハーストS、ナショナルS)

 →香港の名馬「エグザルタント」などを輩出。

 ●ニューアプローチ(英ダービー愛チャンピオンS英チャンピオンSデューハーストS、ナショナルS)

 →G1を4勝した「ドーンアプローチ」や日本で活躍中のダーリントンホール」の父。
 ●ケープブランコ愛ダービー愛チャンピオンSアーリントンミリオンマンノウォーS、ターフクラシック招待S)

 →日本で「ランスオブプラーナ」が活躍中。
 ●リリーオブザヴァレー(オペラ賞)

 →「ヴァンキッシュラン」や「セントレオナード」、「リリーピュアハート」

ディープインパクト産駒の活躍馬を出した繁殖牝馬です。

 ●フランケル英2000ギニー英チャンピオンSインターナショナルS、サセックスS2回、クイーンエリザベス2世SセントジェームズパレスSクイーンアンSロッキンジSデューハーストS

 →デビューから14戦無敗(うちGIは通算10勝、9連勝)という無敵の戦績を誇った最強馬です。

種牡馬としても大活躍中で、主に欧州の芝で高い適性を見せています。

日本でもソウルスターリング「モズアスコット」、などを出していて、

芝でもダートでもG1を勝っていますから、

その能力の高さと汎用性は素晴らしいものがありますね。
 ●ナサニエルキングジョージ6世&クイーンエリザベスS、エクリプスS

 →現在の欧州競馬の主役と言える女傑「エネイブル」の父です。

 ●ノーブルミッション (Noble Mission) - 英チャンピオンSタタソールズゴールドカップサンクルー大賞

 →フランケルの全弟ですね。

 ●ルーラーオブザワールド英ダービー
 ●マジシャン(愛2000ギニーBCターフ
 ●オーストラリア(英ダービー愛ダービーインターナショナルS
 ●ファウンド凱旋門賞BCターフ、マルセルブサック賞)
 ●グレンイーグルス英2000ギニー愛2000ギニーセントジェームズパレスS、ヴィンセントオブライエンナショナルS)

→産駒の「ショックアクション」が新潟2歳S)を勝ちました。
 ●ハイランドリールBCターフキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス香港ヴァーズ2回、プリンスオブウェールズSコロネーションカップセクレタリアトS)
 ●オーダーオブセントジョージ(アスコットゴールドカップ愛セントレジャー2回)
 ●マインディング英オークス英1000ギニークイーンエリザベス2世SナッソーS、プリティーポリーS、フィリーズマイル、モイグレアスタッドS)
 ●ユリシーズインターナショナルSエクリプスS
 ●ヴァルトガイスト(凱旋門賞サンクルー大賞ガネー賞クリテリウムドサンクルー)
 ●チャーチル(Churchill) - 英2000ギニー愛2000ギニーデューハーストS、ヴィンセントオブライエンナショナルS)
 ●カプリ(愛ダービー英セントレジャー
 ●マジカル(英チャンピオンS、愛チャンピオンS2回、ブリティッシュチャンピオンズF&MS、タタソールズゴールドカップ2回、プリティーポリーS)
 ●アンソニーヴァンダイク(英ダービー
 ●ジャパン(インターナショナルSパリ大賞
 ●ラヴ(英オークス英1000ギニーヨークシャーオークス、モイグレアスタッドS)※凱旋門賞回避だそうで、、、残念です。

 

近年は日本馬もかなり欧州遠征が盛んですから、対戦相手として名前を見かけた馬も多いと思いますし、

日本でもかなり有名な馬や凱旋門賞などの一流レースを制した馬がかなり多く出ていますね。

母の父としては
 ●カンタービレ(父ディープインパクト
 ●ガイヤース(父ドバウィバーデン大賞コロネーションカップエクリプスステークスインターナショナルステークス 

 ●キングオブコージ(父ロードカナロア目黒記念
 ●ソットサス(父シユーニ)ジョッケクルブ賞ガネー賞

などを輩出しています。

 

【1999年産】
ハイシャパラルレーシングポストトロフィーエプソムダービーアイリッシュダービーブリーダーズカップ・ターフ2回、アイリッシュチャンピオンステークス

ブラックサムベラミー(ジョッキークラブ大賞、タターソールズゴールドカップ

 →ガリレオの全弟です。

【2000年産】

リフューズトゥベンド(ナショナルステークス、2000ギニークイーンアンステークスエクリプスステークス

 →仏オークスサンクルー大賞などを勝った「サラフィナ」の父です。

 

【2005年産】
リッスン(フィリーズマイル

 →「タッチングスピーチ」や「サトノルークス」の母です。

 

 

■母の父(ブルードメアサイアー)としての主な産駒

【1993年産】
フサイチコンコルド(父カーリアン日本ダービー

 

【1995年産】
ディクタット( 父ウォーニング:モーリス・ド・ゲスト賞スプリントカップ
エルコンドルパサー(父キングマンボ:ジャパンカップNHKマイルカップサンクルー大賞

 

【1997年産】
サキー(父バーリ:凱旋門賞インターナショナルステークス

 

【2000年産】
ヘヴンリーロマンス(父サンデーサイレンス天皇賞・秋

 →産駒の「アウォディー(父ジャングルポケット)」は ダート中距離で活躍

 

【2001年産】
アメリカンポス(父ベーリング:ジャン・リュック・ラガルデール賞、レーシングポストトロフィープール・デッセ・デ・プーラン

 →ハーツクライの最高傑作リスグラシューの母の父です。

 

【2002年産】
ディヴァインプロポーションズ(父キングマンボ:モルニ賞、マルセルブサック賞、プール・デッセ・デ・プーリッシュディアヌ賞、アスタルテ賞)
シーザリオ(父スペシャルウィーク優駿牝馬アメリカンオークスインビテーショナルステークス)

  →この馬はエピファネイアリオンディーズ、サートゥルナーリアなどを出していて繁殖牝馬としても超一流ですね。

 

【2005年産】
ヘンリーザナヴィゲーター(父キングマンボ:2000ギニーアイリッシュ2000ギニーセントジェームズパレスステークスサセックスステークス
コンデュイット(父ダラカニセントレジャーステークスキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスブリーダーズカップ・ターフ2回)

【2006年産】
アンライバルド(父ネオユニヴァース皐月賞

 →名牝系バレークイーンの一族。種牡馬としてはイマイチですね・・・

 

【2007年産】
ワークフォース(父キングズベストダービーステークス凱旋門賞

 →「ナカヤマフェスタ」の世界一を阻んだ馬として日本でも有名ですね。
エイシンアポロン(父ジャイアンツコーズウェイマイルチャンピオンシップ

 

【2008年産】
イモータルヴァース(父ピヴォタル:コロネーションステークスジャック・ル・マロワ賞

 

【2009年産】
ザフューグ(父ダンシリナッソーステークスヨークシャーオークスアイリッシュチャンピオンステークスプリンスオブウェールズステークス

 

【2011年産】
タグルーダ(父シーザスターズキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス英オークス

 
※特に母父としてキングマンボ系との相性は特筆ですね。
 
 
 
種牡馬入前の世間の距離に対する不安も何のその。
これだけ欧州の中〜長距離を中心に、
活躍馬を出したサドラーズウェルズ
 
その血の勢いは凄まじく、しばらくの間は我々日本の競走馬が欧州G1制覇を狙って遠征した際にも、
大きな壁として系統の産駒たちが立ちはだかってくることでしょう。
 
 
今回も最後までご覧いただき有難うございました(^^)
ではまた次回。