日本競馬を大きく変えたロベルトとサンデーサイレンスの血。
その、時に危ういほどの気性の激しさと競走での爆発力は、
アメリカ競馬に突如現れ、
ひと夏の幻の如く駆け去っていった名馬から受け継いだものでした。
その馬の名はヘイルトゥリーズン。
彼の血は後に祖国アメリカと日本で盛大に繁栄することとなるわけですが、
ヘイルトゥリーズンとは一体どんな馬だったのでしょうか。
今回は、
その軌跡をたどっていきたいと思います。
父は素晴らしい血統と競争能力に恵まれながら、
ケガに泣き志半ばで引退した天才的な名馬ターントゥ。
母ノーサードチャンスはマンノウォー3×4の他、
北米のたくましい活性源となる血を豊富に持った馬でした。
そしてそんな父と母の配合によって、
ヘイルトゥリーズンはサーギャラハッドやブルドッグ、アドミラルドレイクという欧州と北米でそれぞれ大活躍する名馬達を産み出した、
「名繁殖牝馬プラッキーリージの4×4」のインブリードをその体内に持つ馬として誕生しました。
アメリカのケンタッキー州の牧場で産まれたヘイルトゥリーズンは、
2歳シーズンの1月という早い時期に競争馬としてデビューします。
しかし気性の幼さか、その才能に身体がついて行かなかったためか。
彼はデビューから3戦は12着→13着→6着と惨敗続きとなってしまいます。
そして6着惨敗後のわずか5日後となる4戦目の未勝利戦。
ダート5F戦のこのレースで2着となりきっかけを掴むと、
そこからまた5日後の未勝利戦でも2着。
そしてそのわずか4日後。ついに6戦目にして初勝利を上げます。
その差はダートの5F戦という短距離のレースながら、なんと2着に9馬身差。
このレースで、ヘイルトゥリーズンの体内に眠る良血の才能は、
確かに目覚めました。
それは1着馬に13馬身差をつけられ12着に惨敗したデビュー戦から、
わずか2ヶ月半後のことでした。
その後中10数日の間隔で一般競走を3着→1着と走ったヘイルトゥリーズンは、
それまで走り続けてきたアケダクト競馬場のダート5F戦であるユースフルSで、
初めてステークス競走に挑みます。
そして初勝利の手綱をとり、その後もずっと彼の背に跨り続けるユーザリーとともに、
このレースを制し、晴れてステークスウィナーとなりました。
このレースで下した「ガーウォル」という馬は、
かつて6着に負けた未勝利戦で先頭ゴールした馬で、
後に多くの重賞で好成績をおさめることとなった強豪でした。
その後も、ヘイルトゥリーズンは短い期間でレースに出走し、
戦いは続きます。
5月のジュヴェナイルSで3着、6月のタイロSでは5着と敗れましたが、
7月のトレモントSとグレートアメリカンSで勝利。
8月前半のサンフォードSとサプリングSでも勝利して4連勝を成し遂げます。
その後8月半ばのサラトガスペシャルSでは何度も下した「ブロンゼルーラ」の6着に敗れてしまいましたが、
このレースの敗因はレース中に痙攣を起こしてしまった為、
と言われています。
しかしそのわずか10日後。
同じサラトガ競馬場で数多の名馬を産み出した出世レースであるホープフルSで、
2着のブロンゼルーラに10馬身差をつける圧勝劇を演じ、
競走馬としての評価を一気に上げました。
返す刀で9月のワールズプレイグラウンドSを制覇。
その後もタフなヘイルトゥリーズンは多くのレースに出走し活躍するはずでしたが・・・
調教中の落鉄のアクシデントが彼を襲います。
「前脚の種子骨の骨折」
激しいはずの痛みにも何とか耐えたヘイルトゥリーズンでしたが、
競走馬として2度とレースに出走することは出来ず。
わずか9ヶ月ほどの競走生活ながら、
18戦9勝(うちステークス競走7勝)という驚異的な成績を残し、
この年の2歳チャンピオンの称号を胸に、彼は第二の馬生に進むこととなったのです。
「ヘイルトゥオール」や「プラウドクラリオン」などのクラシックウィナーを出す好成績を収めました。
1970年には、大種牡馬ボールドルーラーから北米リーディングサイアーの座を奪取しています。
その前年である1969年。
2頭の後継種牡馬を世に送り出した事でした。
一頭がブライアンズタイムやシンボリクリスエス、グラスワンダーなどが系統を繁栄させている「ロベルト」。
そして後に日本競馬史上最高の種牡馬となったサンデーサイレンスや、
タイキシャトルの父であるデヴィルズバッグの父であった「ヘイロー」です。
彼らの伝説的な活躍は、もちろんここでは書ききれないほどです。
後にしっかりとその軌跡を追っていきたいと思います。
持て余すほどの才能を父から受け継ぎ、
その才能が満開になった矢先に、
父と同じく無念のリタイアを遂げることになってしまったヘイルトゥリーズン。
彼の子孫たちはそのひと夏で咲き誇り、
そして散った天才の血を確かに受け継ぎ、
今なお世界の競馬場で活躍し続けています。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました(^^)
ではまた次回!