血統入門【第28回】北米活性血統の頂点ミスタープロスペクター

偉大なる世界的サイアーであるノーザンダンサーの母の父として、

今日まで世界中の競馬シーンに影響を与え続ける、

「グレイゴースト(灰色の幽霊)」と呼ばれた芦毛の名馬ネイティヴダンサー

 

 

redfray.hatenablog.com

 

彼は、自身のサイアーラインの拡大という点でも、

ノーザンダンサーに勝るとも劣らない、

世界的なサイアーを輩出することになりました。

 

ネイティヴダンサーの産駒であり、

6ハロン以上のレースには一度も出ていないにも関わらず、

後続に大差をつけ、コースレコードを連発した異端のスピード馬、

レイズアネイティヴ

 

そして快速の異端児は種牡馬となって、

後に「20世紀最高の種牡馬」として世界中にその名を轟かせる事となる、

稀代の名サイアーを輩出します。

 

日本競馬でも「ミスプロ」の愛称で親しまれ、

数多くの後継馬たちがターフで、ダートで大活躍している、

ミスタープロスペクターです。

 

ミスタープロスペクター(1970年 アメリカ産まれ)

 

 

Mr. Prospector.jpg

 

ミスプロの父は2歳シーズンのみアメリカで活躍し、

通算成績4戦4勝の異端の快速馬レイズアネイティヴ」。

父にネイティヴダンサーの血を持ち、

母父にテディの血を引く「ケースエース」

母母父にマンノウォーの血を引くアメリカンフラッグ」という、

北米の活性血統の掛け合わせによって誕生したスプリンターでした。

 

母のゴールドディガーは「金鉱採掘者」の意味を持つ馬名で、

35戦して10勝(うちステークス競走5勝やケンタッキーオークス2着)という、

優れた競走成績を誇った馬でした。

 

ミスタープロスペクターという馬名は「探鉱者」という意味であり、

ミスプロは母から連なるこの馬名と共に、

母父である「ナシュア」や母母父である「カウントフリート」といった、

逞しい血統の活力やスピードとパワーを受け継ぎました。

 

今では「仕上がりの早い血」としてのイメージが強いミスプロですが、

意外にも彼自身は2歳シーズンは脚部不安のため全く出走せず、

3歳の2月にデビュー戦を迎える事となります。

 

ダート6Fの未勝利戦でデビューし、いきなり12馬身差をつける圧勝でその素質を見せつけます。

 

続いて出走したダート7Fの一般競走を勝利し、次走のダート6F戦の一般競走も1.07.8の

ガルフストリームパーク競馬場コースレコードで快勝。

そのスピード能力の高さは証明されましたが、

その後ダート8.5F戦の一般競走は3着、ダート8F戦のダービートライアルSでは2着と勝ちきれず、

5戦3勝の戦績で3歳シーズンを終えました。

 

3歳時はその勝ちっぷりの鮮やかさから、

同期であった最強馬セクレタリアトの対抗馬としてクラシック出走のプランも上がったほどですが、

ダービートライアルS後の剥離骨折の発覚で結局クラシックへの出走は叶いませんでした。

 

4歳シーズンの初戦。

ダート6Fの一般競走を勝利すると、続くダート6FのポーモノクH(G3)で3着に入線。

ダート7FのロイヤルポインシャナHでは2着でしたが、

この時の勝ち馬は1.21.0というコースレコードを出しています。

 

そしてその次走。

ワーラウェイHをガーデンステートパーク競馬場のダート6F戦のコースレコードである、

1.08.6という好タイムで快勝しました。

 

その後はダートの6F戦で2勝し、引退レースとなったダート6FのG3レースで2着に好走し、

4歳時は9戦4勝のキャリアで競走馬生活を引退。

 

通算戦績は14戦7勝。

ダート6Fのスプリント競走で2度のレコードを出しましたが、

重賞は2度の2着があったものの勝つことはできませんでした。

そしてマイル以上のレースでは優れた成績を上げられなかったため、

「競走馬としてのミスプロは生粋のスプリンターだった」と言えるでしょう。

 

 

種牡馬としてのミスタープロスペクター

 種牡馬としての世界的な活躍と存在感を考えると、

その競走成績は意外にも地味だったミスプロ

しかしその身体に秘めた一流のスピード能力は、

種牡馬になってこそ真価を発揮しました。

 

そしてそれだけでは有りません。

種牡馬として最も重要と言える能力である、

「母系の良さやスケールを最大限に活かす力」

この能力が最上級であったことが、

多彩な才能を有した産駒や後継を輩出し、

ミスプロを世界的なサイアーへと押し上げました。

 

以下は、ミスプロの産駒として活躍した競走馬であり、

サイアーラインを築いた馬たちです。

(※あまりにも活躍馬や後継馬が多いので、特に重要な馬はまた別の機会に詳細を書いていきたいと思います。)

特に重要な後継種牡馬は、太字で記載します。

※赤字は牝馬の産駒

 

【1977年産まれ】
ファピアノ1981年メトロポリタンハンデキャップなど)

 アンブライドルド (1987産まれ)

  アンブライドルズソング(1993年産まれ)

   →ダンカーク(2006年産まれ) 

  エンパイアメーカー(2000年産まれ)

   →バトルプラン(2005年産まれ)

  →レディバラード(1997年産まれ)

   →ダノンバラード(2008年産まれ 父ディープインパクト

 

【1978年産まれ】
ミスワキ(1980年サラマンドル賞など)

 →ブラックタイアフェアー(1986年産まれ)

 →アーバンシー(1989年産まれ)

  →ガリレオ(1998年産まれ 父サドラーズウェルズ

  →ブラックサムベラミー(1999年産まれ 父サドラーズウェルズ

        →シーザスターズ(2006年産まれ 父ケープクロス

 

【1979年産まれ】
クラフティプロスペクター (ガルフストリームパークH2着など)

 アグネスデジタル(1997年産まれ)


【1983年産まれ】
●ウッドマン(フューチュリティSなど)

 →ヘクタープロテクター(1988年産まれ)

 →ティンバーカントリー(1992年産まれ)

  →アドマイヤドン(1999年産まれ)

 

1984年産まれ】
アフリート(1987年ジェロームハンデキャップなど)

 →スターリングローズ1997年産まれ)

 →バンブーエール(2003年産まれ)

 →ミリオンディスク(2004年産まれ)

 

ガルチ (1987年・1988年メトロポリタンハンデキャップ、1988年ブリーダーズカップ・スプリントなど、G1を7勝)

 →サンダーガルチ(1992年産まれ)

 →イーグルカフェ(1997年産まれ)

 

ゴーンウェスト (1987年ドワイヤーステークスなど)

 ザフォニック(1990年産まれ)

  →ザール(1995年産まれ)

  →シェンク(1996年産まれ)

   →マルカシェンク(2003年産まれ 父サンデーサイレンス) 

 →ミスターグリーリー(1992年産まれ)

 →イルーシヴクオリティ(1993年産まれ)

  →スマーティージョーンズ(2001年産まれ)

  →レイヴンズパス(2005年産まれ)

   →タワーオブロンドン(2015年産まれ)

 →ザミンダー(1994年産まれ)

  → ザルカヴァ(2005年産まれ)

 →スパイツタウン(1998年産まれ)

  →リエノテソーロ(2014年産まれ)

  →マテラスカイ(2014年産まれ)

  →モズスーパーフレア(2015年産まれ)

    →ケイムホーム(1999年産まれ)

     →インティ(2014年産まれ)

 

ジェイドハンター(1988年ドンハンデキャップ、ガルフストリームパークハンデキャップなど)

 →スツーカ(1990年産まれ)

 

マイニング(1988年ヴォスバーグステークスなど)

 →ローミンレイチェル(1990年産まれ)

  →ゼンノロブロイ(父サンデーサイレンス 2000年産まれ)

   →サンテミリオン(2007年産まれ)

   →ペルーサ(2007年産まれ)

 

【1985年産まれ】
シーキングザゴールド(1988年ドワイヤーステークス、スーパーダービーなど)

 →シーキングザパール(1994年産まれ)

  →シーキングザダイヤ(2001年産まれ 父ストームキャット

 →マイネルラヴ(1995年産まれ)

 →ドバイミレニアム(1996年産まれ)

  →ドバウィ(2002年産まれ)

 

フォーティナイナー(1987年フューチュリティステークス、シャンペンステークス、1988年ハスケルインビテーショナルハンデキャップトラヴァーズステークスなど)

 →トワイニング(1991年産まれ)

 →エンドスウィープ(1991年産まれ)

  →サウスヴィグラス(1996年産まれ)

  →スウェプトオーヴァーボード(1997年産まれ)

   →パドトロワ(2007年産まれ)

   →レッドファルクス(2011年産まれ)

   →オメガパフューム(2015年産まれ)

  →プリサイスエンド(1997年産まれ)

  →スイープトウショウ(2001年産まれ)

  →ラインクラフト(2002年産まれ)

  アドマイヤムーン(2003年産まれ)

   →レオアクティブ(2009年産まれ)

   →ハクサンムーン(2012年産まれ)

   →セイウンコウセイ(2013年産まれ)

   →ファインニードル(2013年産まれ)

 →コロナドズクエスト(1995年産まれ)

 →ダイワパッション(2003年産まれ)

     →エポカドーロ2015年産まれ 父オルフェーヴル)  

 

【1987年産まれ】
ジェイドロバリー (1989年ジャン・リュック・ラガルデール賞〈フランスグランクリテリウム〉など)

 

マキャベリアン(1989年モルニ賞、サラマンドル賞など)

 →ストリートクライ(1998年産まれ)

 →ストーミングホーム(1998年産まれ)

 

【1988年産まれ】
スキャン(1991年ジェロームハンデキャップ、ペガサスハンデキャップなど)

 

【1990年産まれ】
キングマン(1993年プール・デッセ・デ・プーランフランス2000ギニー〉、セントジェームズパレスステークスムーラン・ド・ロンシャン賞など)

 エルコンドルパサー(1995年産まれ)

  →ヴァーミリアン(2004年産まれ)

 →キングズベスト(1997年産まれ)

  →ワークフォース2007年産まれ)

  →エイシンフラッシュ(2007年産まれ)

  キングカメハメハ(2001年産まれ)

  ※キングカメハメハ系は別途記載します。

 

【1991年産まれ】
●アワエンブレム(カーターH2着など。重賞勝ちなし)

 →ウォーエンブレム(1999年産まれ)

  →ブラックエンブレム(2005年産まれ)

  →ローブティサージュ(2010年産まれ)

 

【1992年産まれ】
スマートストライク(1996年フィリップ・H. アイズリンハンデキャップなど)

 →ブレイクランアウト(2006年産まれ)

 

【1997年産まれ】
フサイチペガサス(2000年ケンタッキーダービーなど)

 

【1998年産まれ】
アルデバラン(2003年サンカルロスハンデキャップ、メトロポリタンハンデキャップ、フォアゴーハンデキャップなど)

 

 

上記のように、

北米でも欧州でも日本でも、

そして短距離でも長距離でも、

ダートでも芝でも活躍する産駒たちを輩出し、

その血を拡大させ続けています。

 

「この世に生き残る生物は,最も強いものではなく,最も知性の高いものでもなく,最も変化に対応できるものである。」

というダーウィン進化論の格言。

 

それを最も体現して世界に繁栄を築いた、

偉大な種牡馬ミスプロ

 

彼自身の凡庸な競走成績は、

まさにその予見だったのかもしれません。

 

 

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

ではまた(^o^)