大種牡馬ミスタープロスペクターの中に眠っていた芝競馬への適正。
その才能は一頭の偉大な競走馬であった牝馬と結びつき、
後にサイアーとして世界中にその血の影響力を広げる一頭の天才的な良血馬を産み出しました。
今回の主人公キングマンボは、
父のサイアーとしての才能と母の競走馬としての才能をその身に受け継ぎ、
昇華させて素晴らしい産駒を数多く輩出しました。
そんな彼の生涯と功績を辿ってみましょう。
父ミスタープロスペクターはネイティヴダンサー系の活性血統の頂点として、
世界中にその血を広げた20世紀最高のサイアーと言える種牡馬の一頭です。
その血は世界中を駆け巡って、
現在「ミスタープロスペクター系」は最も大きな影響力を持つ大系統の一つになっています。
キングマンボの母であるミエスクはノーザンダンサー系の大種牡馬ヌレイエフの産駒。
フランスを中心に活躍し、
16戦12勝(うちG1を10勝)2着3回、3着1回という極めて優秀な戦績を残した名牝であり、
英仏の1000ギニーやジャックルマロワ賞の連覇、ムーランドロンシャン賞の勝利などの功績で、
1987年、88年と2年連続でエクリプス賞芝牝馬チャンピオンに輝きました。
世界最高の種牡馬となった父と、
80年代後半に芝のマイル路線で世界一強かった母。
キングマンボという馬は、
そんな両親の血を体内に宿した存在だったのです。
キングマンボは2歳となった1992年の7月、
フランスのメゾンラフィット競馬場でデビューを迎えます。
12頭立ての芝1200mのこのレースを惜しくも2着と惜敗してしまいますが、
次走の同じ舞台でしっかりと初勝利を果たしました。
しかし2歳シーズンはその後8月に2戦、
9月に1戦、10月に2戦してG1や重賞レースでも好走しますが、
勝ち切ることが出来ずにシーズンを終えました。
そして明け3歳シーズン。
再び4月のジェベル賞(芝1400m)への出走でメゾンラフィット競馬場に帰ってきたキングマンボは、
ついにその身に宿した良血の才能を開花させることとなります。
このレース2歳シーズンに敗れていた強敵ザフォニックを下して久々となる勝利を飾ると、
一ヶ月後にロンシャン競馬場で行われた仏2000ギニー(G1 芝1600m)で連勝。
その一ヶ月後のセントジェームズレパスS(G1 芝8F)では4頭立てながら、
ここもきっちり勝利して3連勝(G1レース2連勝)と確かな勢いを示しました。
2ヶ月後の8月。
ドーヴィル競馬場のジャックルマロワ賞(G1 芝1600m)に駒を進めたキングマンボは、
同レースの母仔制覇という偉業に挑むこととなります。
しかしこのレースでは英1000ギニーの覇者で、後に日本遠征で安田記念にも出走する、
仏1000ギニーを2着の実績を持つスキーパラダイスの後塵を拝し3着と敗退してしまいます。
9月。
ムーランドロンシャン賞(G1 芝1600m)は、
再び偉業への挑戦の舞台となりました。
前走のジャックルマロワ賞から3頭増えた11頭立てとなり、
前走で先着されたスキーパラダイス、
G1サセックスSを勝ってここに臨んできたアイルランドのビッグストーン、
同じくアイルランドの馬で、
愛2000ギニーを制した後にG1レースで堅実に好走していたバラシアなどライバル馬も強力なメンバーでした。
しかしキングマンボは良血馬の意地か母の後押しか、、、
迫るスキーパラダイスを今度はアタマ差凌いで、
このレースを勝利しました。
同レース史上唯一の母仔制覇という偉業を成し遂げたのです。
その後アスコット競馬場で開催されたクイーンエリザベス2世S(G1 芝8F)に出走したキングマンボは、
前走で先着したビッグストーンとバラシアに続く3着に敗れ、
このレースを最後に引退となりました。
父の種牡馬としての大成功や母の最高クラスの競走成績と照らし合わせると、
自身は偉業を果たしたものの決して満足のいく戦績を上げることは出来なかったと思われるキングマンボ。
しかしその身に宿した才能は産駒たちに受け継がれ、
種牡馬として世界的な成功を収め一大系統を築き上げることとなります。
彼が産み出し、日本競馬で活躍した主要な産駒たちの活躍ぶりを記していきたいと思います。
エルコンドルパサー(1995年産まれ)
通算11戦8勝(うちフランスで4戦2勝)
海を渡りフランスの凱旋門賞で、世界中を感動させる死闘を繰り広げた名馬でした。
その4歳シーズンは日本では1レースも出走しなかったにも関わらず、
年度代表馬の座に輝いています。
いかにそのフランスでの功績が、競馬界に大きな影響を与えたか・・・
という事がわかりますね。
キングズベスト(1997年産まれ)
通算6戦3勝
英2000ギニーの勝ち馬で、超名繁殖牝馬アーバンシーの半弟という良血馬。
種牡馬として、凱旋門賞でナカヤマフェスタを下したワークフォースや、
※エイシンフラッシュは、血統的にもっと評価されていい種牡馬だと思うのですが・・・個人的に(^_^;)
アルカセット(2001年産まれ)
通算16戦6勝
サンクルー大賞やジャパンカップなどを制したクラシックディスタンスの名馬で、
日本のハーツクライの鬼脚を抑えて勝利しました。
引退後は日本で種牡馬入りしましたが、
種牡馬としては成功できませんでした・・・
キングカメハメハ(2001年産まれ)
通算8戦7勝
松田国英調教師の「マツクニローテ」の体現者であり、
ほぼパーフェクトな戦績で圧倒的な強さを見せましたが、
惜しくも3歳シーズンの秋に故障で引退となってしまいました。
種牡馬としては、
日本競馬にキングマンボ系を根付かせた偉大なサイアーとなり、
その産駒からは芝の短距離〜長距離、ダートと各ジャンルで多彩なチャンピオンが誕生しました。
リーディング争いでは同じ時期に種牡馬として活躍していたディープインパクトに敗れることが多かったキングカメハメハでしたが、
産み出した名馬、後継種牡馬の数や質は、決して勝るとも劣っていません。
彼が競馬会に遺した功績はあまりにも大きすぎるので、
それはまた別の機会に書いていきましょう!
・・・如何でしたでしょうか。
日本競馬にも大きな影響を与え続けているキングマンボ。
彼の存在を、少しでも身近に感じて頂けたら幸いです。
今回もご覧頂きありがとうございました(^o^)
ではまた次回。