【2022年新種牡馬】マインドユアビスケッツ

観客の歓声を最も湧かせ、強烈な印象を与える追い込み脚質。

マインドユアビスケッツは世界中のホースマンや競馬ファンが見つめる視線の先、

界最高峰のドバイの舞台で2度も鮮やかな追い込みを決めて見せた。

 

鋭く、強烈で、そして美しさを感じるほどの鬼脚を持った彼は、

一体どんな競走馬だったのだろうか。

現役時代の軌跡を振り返りながら、今後の種牡馬としての可能性について考えていきたい。

 

マインドユアビスケッツ(2013年 アメリカ産まれ)

 

血統面

 

マインドユアビスケッツは2013年3月15日に、アメリカで産まれた。

 

その血統はまさに「純真なアメリカ血統」であり、数々の米国産の名馬、

種牡馬たちの血が彼の体の中に流れている。

父のポッセは北米の名血デピュティミニスター系の馬で、

短距離のダート戦線で活躍した競走馬だった。

※日本でも種牡馬として活躍したハイペリオン系のフォルリ産駒のポッセとは、

同名だが別の馬。

 

母の父トセットもデピュティミニスター系の馬で、

アメリカの中距離ダートG1を2勝している。
母母父のストップザミュージックもヘイルトゥリーズン系のアメリカ産馬で、

トムフールの血を持つバリバリの米血の馬。

その奥にもボールドルーラー系のマスターダービーがいて、

父と母父を経由したデピュティミニスターの3x4を持つ。

ダートの一線級の舞台で豪脚を繰り出すための、

血統的な下地を十分に有しているのが、

このマインドユアビスケッツという馬である。

 

現役時代

 

2歳の8月にサラトガ競馬場のダート5F戦でデビューしたマインドユアビスケッツは、

初戦から素質の片鱗を見せて2着と好走した。<br>しかしこの年はその後3戦するも、

2着→3着→4着と勝ちきれずに2歳シーズンを終えた。

年が明けて転厩を挟んで、3歳の初戦は4月からの始動だった。

この未勝利戦はダートの短距離戦だったが、

2着に7馬身以上の着差をつけて快勝する。

 

その3ヶ月後に2勝目をマークしたマインドユアビスケッツは、

重賞初挑戦となったアムステルダムS(G2・ダート6.5F戦)も勝利し、

連勝で重賞初制覇を飾った。

 

その後は8月のキングスビショップS(G1・ダート7F戦)で5着。

9月にG3戦で2着と健闘が続き、

11月にブリーダーズカップ・スプリント(G1・ダート6F戦)に出走した。

このレースは7頭立てと少頭数ながら、

1番人気だったマゾヒスティックを始め、ドレフォンなど強豪馬が揃っていた。

マインドユアビスケッツは後方から虎視眈々とレースを進めた。

最後の直線で外に持ち出すと、凄まじい脚色で一完歩ずつ、

前で争うドレフォンとマゾヒスティックに確実に迫った。

 

ー差せる。

ー差しきれる。

 

そう思わせるような距離まで追い詰めた直後がゴール版で、

惜しくもこのレースでは3着に終わっている。

(その後マゾヒスティックの薬物検査による降着で2着に繰り上げ)

もはやダートのスプリントでは一線級と言っていい実力を示していたマインドユアビスケッツは、

その一ヶ月後の12月にマリブS(G1・ダート7F戦)に出走し、

見事初G1制覇を果たして充実の4歳シーズンを迎えることとなった。

 

そしてなんと言っても、この馬の最も素晴らしい功績は「ドバイゴールデンシャヒーン連覇」である。

4歳時のこのレースでは終始後方の外目を追走し、

直線を迎えると他馬が争う外からまさに豪脚一線。

一頭だけ違う脚色で直線半ばに先頭に立つと、

あとは突き離す一方で3馬身差でゴールを駆け抜けた。

 

もはやダートのスプリント戦線では敵なしの勢いだったマインドユアビスケッツは、

帰国凱旋後にG2レースを制覇するが、

その後はG1レースで3度出走するも6着→3着→2着と不安定な結果で、

4歳シーズンを終える。

 

明け5歳シーズン。

昨年同様に国内のレースを1戦挟んでドバイに飛んだマインドユアビスケッツは、

ドバイの地で連覇を目指して強豪馬たちを迎え討った。

破竹の5連勝中であったエックスワイジェット。

前年のブリーダーズカップ・スプリントを含む重賞3連勝中のロイエイチ。

そして日本からは、マテラスカイも刺客としてこのレースに出走していた。

 

直線、マインドユアビスケッツの姿は現れなかった。

前を行くエックスワイジェットとロイエイチ。

直線半ばまで、明らかにこの2頭で決まるように見えたレースだった。


3歳時のブリーダーズカップクラシックの時のように、

前で2頭の強豪馬が競っている。

あの時は差せなかった。

差せそうで、差せなかった。

マインドユアビスケッツの執念が宿った鬼脚は、

今度は確実に前を行くライバルたちを捉えた。

 

ドバイゴールデンシャヒーンの連覇。

彼は見事に、世界一のダートスプリンターであることを再び証明してみせた。

 

種牡馬としてのマインドユアビスケッツ

 

血統のところで記載したように、

マインドユアビスケッツの身体には数多のアメリカの一流馬の血が流れている。

彼の現役時代のスピードを考えると、

芝で走れる産駒も十分に出せると考えられるが・・・

やはり自身と同様に、ダートのスプリント戦線で王者となるような産駒の登場に、

どうしても期待を寄せてしまう。

 

日本で活躍しているデピュティミニスター系の種牡馬といえば、<br>真っ先に浮かぶのはやはりフレンチデピュティ系統のクロフネである。


スピードとパワーに優れ、芝でもダートでも王者になったクロフネは、

牝馬のスプリンター〜マイラーを中心に、

主に芝のレースを得意とする産駒を多く輩出した。

直近の活躍馬では白毛のソダシが阪神JF桜花賞などを制している。

 

遡ってデピュティミニスター系の種牡馬でいくと、

マインドユアビスケッツの父方祖父にあたるシルバーデピュティを始め、

母の父方であるオーサムアゲインやその産駒のゴーストザッパーは、

主に母方に入って多くの活躍馬を出している。
他にはアパパネの母の父だったソルトレイク

スプリンターを中心に輩出したデヒア

スプリングアットラストという種牡馬からはコパノキッキングが出ているが、

残念ながらセン馬となったコパノキッキングには、

系統繁栄を担う可能性は残っていない。

 

マインドユアビスケッツには自身の鬼脚を受け継ぐ一流スプリンターの輩出とともに、

系統繁栄を託せるような後継種牡馬を出すことも、大いに期待したい。

 

それが叶えば、日本の短距離ダート界の一層のレベルアップと、

日本調教馬のドバイゴールデンシャヒーン制覇も、

決して夢ではないだろう。