その馬名とは裏腹にダート戦には一度も出走せず、
芝でキャリアを重ねたビーチパトロール。
イギリスの強豪タリスマニックや、
日本でもその名が知られているノーザンファームの持ち馬ヨシダなど、
数々の強敵たちと接戦を演じてきた実力は本物だった。
産駒が活躍していく彼の現役時代は、
どのような馬だったのか。
また今後の種牡馬としてはどうか?
ビーチパトロール(2013年 アメリカ産まれ)
父はミスタープロスペクター系、
半弟には種牡馬として活躍しているスタチューオブリバティがいる良血馬である。
産駒にはビーチパトロールの他に、
日本の障害G1馬として活躍したアポロキングダムなどがいる。
ビーチパトロールの母の父であるQuiet Americanもミスタープロスペクター系の名種牡馬Fappianoを父に持つ馬であり、
自身はG1を1勝したのみであるが、産駒としてケンタッキーダービーとプリークネスSの2冠を制し、
ベルモントSでも2着に入線したReal Quietを輩出した名種牡馬である。
自身は芝の中距離を主戦場にして勝ち星を重ねた。
2歳11月の芝8F戦でデビューすると、3着に好走。
2戦目で2着に入線した後に、
年を跨いで3歳3月に出走した3戦目の芝8F戦で順当に初勝利をマークした。
翌月には連勝で2勝目を上げ、
その後は重賞初挑戦のアメリカンターフS(G2・芝8.5F)で2着。
続いて出走したペンマイルS(G3・芝8F)では6着に敗れたものの、
次走のベルモントダービー招待S(G1・芝10F)では3着と健闘し、
確かな手応えを掴んだ。
続くセクレタリアトS(G1・芝10F)では直線で早めに抜け出すと、
そのまま驚異的なスピードの持続力を発揮して後続を完封してゴール。
重賞初勝利をG1の大舞台で果たすことになった。
その後4歳時に連勝したアーリントンミリオン(G1・芝10F)とジョーハーシュ・ターフクラシックS(G1・芝12F)でも、
4コーナーで堂々の先頭からの直線で後続完封の横綱相撲。
芝に高い適正を見せたビーチパトロールだが、
そのレース運びに関しては、
血統通りアメリカ競馬らしい高次元のスピードと持続力を最大の武器にしていたと考えられる。
破竹の勢いで望んだアメリカ競馬の芝レースの最高峰の舞台であるブリーダーズカップターフ(G1・芝12F)では、
世界を股にかけて活躍している欧州のTalismanicやHighland Reelといった強豪馬を、
堂々と迎えての2着好走。
その後前年5月に出走して2着だったターフクラシックS(G1・芝9F)でヨシダの後塵を拝して再度2着に入線すると、
次走のマンハッタンS(G1・芝10F)では13着と大敗を喫してしまい、
そのレースを最後にターフを去ることとなった。
日本では既にキングカメハメハが偉大なる功績と一大勢力を築き上げているキングマンボの系統。
そしてエイシンフラッシュなどがすでに日本競馬への高い適正を示しており、
ビーチパトロールもその新たな勢力として大いに期待が寄せられている。
ただし、前述した競走馬・種牡馬たちがその血統構成の中に欧州の芝適正の高い血を有しているのに比べて、
ビーチパトロールは父のLemon Drop KidがキングマンボにSeattle Slew(Bold Ruler系米3冠馬)×Buckpasser(Tom Fool系世界的BMS)というアメリカ競馬最高の血を重ねた配合。
その父にQuiet American(Fappiano系)×Timeless Native(Damascus系)×Clever Trick(Icecapade直仔)という組み合わせであり、
非常にアメリカンな血統構成となっている。
もちろん産駒でも芝適正の高い馬も多く出ると予想されるが、
それ以上にダートの大物を輩出も期待したくなる。
その意味ではビーチパトロールは様々なタイプの子孫を残し、
世界中にその血を広げているミスタープロスペクターの3×4インブリードを有している。
偉大な先祖のように配合相手の特徴を引き出し多彩な産駒を輩出する柔軟性が発揮できれば、
彼の種牡馬としての活躍は輝かしいものになるのでは無いかと期待できる。