【2022年新種牡馬】デクラレーションオブウォー

現役引退後はアイルランド種牡馬生活をスタートしたデクラレーションオブウォー。

翌年にはアメリカに渡り、シャトル種牡馬としてオーストラリアでも供用されている。

そして2019年。

彼は日本競馬を新たな戦いの地として選び、

日本での種牡馬生活をスタートさせた。

 

今年はハービンジャー産駒のG1ホース2頭が、

ともに種牡馬入りせず乗馬として今後の馬生を送ることが発表された。

偉大なるダンチヒ系の後継種牡馬として、

今後ますます期待を寄せられるデクラレーションオブウォー。

彼の現役時代の活躍ぶりとその血統、

そしてすでに日本競馬で活躍している産駒の傾向などを見ていきたい。

 

クラレーションオブウォー(2009年 アメリカ産まれ)

 

 

 

血統面

 

父のウォーフロントはアメリカのG2を勝った競走馬で、

G1レースでは2度の2着はあったものの、

ビッグタイトルには残念ながら縁が無かった。

だが種牡馬としては「ダンチヒ晩年の傑作」とまで言われるような評価を得ていて、

その系統繁栄に大いなる期待が持てる存在となっている。

 

その中で後継種牡馬であるザファクター(2008年産)や、

クラレーションオブウォー(2009年産)、

アメリカンペイトリオット(2013年産)などが日本にも輸入され、

種牡馬として活躍していて、今後ますます日本競馬において、

その存在が大きくなってくる系統だと考えられる。

 

クラレーションオブウォーは万能なダンチヒ系の競走馬らしく、

芝でキャリアを重ねた後に、

ダートでも世界最高峰のレースで好走して高い適性を示している。

 

現役時代

 

クラレーションオブウォーは2歳の11月に名手クリストフ・スミヨンを背にデビュー。

デビュー戦と翌月の条件戦を連勝し、2歳時は2戦2勝。

 

明けて3歳からは、ジョセフ・オブライエン(父は名伯楽であるエイダン・オブライエン氏で、

現在は自身も調教師となっている)に鞍上が変わって3歳時は3戦2勝。

ダイヤモンドS(G3・AW11F戦)を制している。

 

その遅咲きの才能は4歳となって開花し、

6月のクイーンアンS(G1・芝8F戦)で初G1制覇を成し遂げた。

 

その後もエクリプスS(G1・芝10F戦)でアルカジームの2着、

サセックスS(G1・芝8F戦)で3着、

ジャック・ル・マロワ賞(G1・芝8F戦)4着と好走し、

続くインターナショナルS(G1・芝10F戦)ではエクリプスSで敗れたアルカジームに先着して、

見事にG1レース2勝目を挙げた。

その後陣営に適正を見込まれて挑戦したダート最高峰のレース、

ブリーダーズカップ・クラシックでは期待通り高い適性を示し、

初ダートながら勝ち馬からハナ、アタマ差の3着に好走した。

このレースを最後に現役を引退。

芝、ダートのG1制覇の夢は、産駒たちに託されることになる。

 

種牡馬としてのデクラレーションオブウォー

 

父の後継種牡馬として、いや、世界のダンチヒ系の日本での系統繁栄の期待を背負って、

日本で種牡馬として奮闘しているデクラレーションオブウォー。

彼の血統的な特徴と産駒の傾向、今後の期待を記していきたい。

 

●勢いに乗る父、ウォーフロントの血

父がDanzig系の後継種牡馬で成功しているウォーフロントである点。

これは以前に記したアメリカンペイトリオットとも共通している。

自身が、芝だけでなくダートへの高い適性を示したが、

産駒も芝、ダートが得意なタイプや、あるいは父同様に2刀流の産駒も出ている。

 

柔軟性に秀でたダンチヒ系の種牡馬らしく、

配合相手の牝馬によって、

今後も様々な適性や特徴を持った産駒を送り出していくだろう。

逆に言うと、G1制覇を成し遂げるような高い能力を持ったスペシャリストの登場が、

喫緊の課題となっていくのではないか。

 

●主な産駒の特徴

賞金獲得順に主な産駒をピックアップして考察する。

 

①デュードヴァン(2017年産)

クラレーションオブウォー×Tapit×Storm Cat×Alydar

 

母方にアメリカンな血を寄せ集めた血統傾向通り、

デビューから東京ダートに高い適性を示し、デビュー戦、カトレア賞を連勝。

3戦目のアーリントンカップでは11着と惨敗し、

ダートに戻った4戦目の青龍Sで再びダート戦を制し、

続く重賞のユニコーンSでも2着と明らかにダート馬としての適性を持っている。

斤走でもリステッド競走で連続3着するなど、

ダートではOPクラスの活躍をしている馬。

 

②ジャスパージャック(2016年産まれ)

クラレーションオブウォー×Seeking the Gold×Red Ransom×His Majesty

 

デビュー戦からはしばらくマイル〜中距離戦線で戦っていたが、

父方×母父方でミスプロ5×3(ゴーンウエストシーキングザゴールドを経由)を持つ大型馬らしく、

本来の適正であるスプリント路線にシフトし、

芝ダートの両方に適正を持つスプリンターとなっている。

 

③モズエロイコ(2016年産まれ)

クラレーションオブウォー×Tapit×Darshaan×Sadler's Wells

 

ダートで2勝したあとは頭打ちになり、障害に転向。

デュードヴァンと同じく母父にTapitを持つが、

こちらは母父父がダルシャーン、母母母父サドラーズウェルズと、

欧州血統をMixした構成になっている。

ダート血統であるTapitとの組み合わせはニックス傾向だが、

父が万能型なだけにダートスペシャリストの誕生にはもう少しダート寄りの、

血統構成の配合のほうが望ましいのかもしれない。

 

賞金4位のパリテソーロ(2016年産※引退)が母父A.P.Indy

5位のピースプレイヤー(2016年産※引退)が母父Pulpitと、

明らかに母父ボールドルーラー毛糸の組み合わせは、

高いダート適性を表し好相性の傾向が出ている。

 

Danzig系の大物種牡馬としての期待

これまで日本での「Danzig系」といえば、

チーフズクラウンマイネルレコルトマイネルキッツビービーガルダンなど)

グリーンデザート系シンコウフォレストベーカバドなど)

アジュディケーティングアジュディミツオーワイドバッハなど)

といった種牡馬・競走馬が活躍してきたものの、

どの系統もその勢力を拡大・定着するまでには至っていないのが現状。

デインヒルから芝適性を強く受け継いだ「ハービンジャー」が、

日本でもG1馬を輩出したが、残念ながら牡馬の2頭は先日種牡馬入りしないことが既に発表されている。

アメリカンペイトリオットと同様にデクラレーションオブウォーが種牡馬として活躍し、

新たな系統として「ウォーフロント系」の地位を確立できれば、

サンデー系やキンカメ系、そしてエピファネイア(ロベルト系×サンデー系)の産駒が主流となっている今の日本の競馬界にとって、

その意義は非常に大きい。