血統入門【第1回】サラブレッドの三大始祖

競馬をはじめ、その中で血統の魅力に触れてから早10年以上・・・

 

そのわずかな間にも、サラブレッドの血統はどんどん進歩を見せ、

変化し続けてきました。

 

競馬はブラッドスポーツだと言われるように、

「血統」という要素は競走馬の運命を決定づけると言っても良いものであり、

かつ競馬予想のファクターとしてもとても重要な部分です。

 

しかも、血統にはドラマや物語がある。

ここが、ほかのファクター(ラップ予想、指数予想など・・・)との、

大きな違いでもあると考えています。

 

つまり、血統を知り、理解し、予想ファクターとして活かすには、

そのドラマやストーリー、背景と言った部分を知らなくてはならない・・・

 

ここでは数回に渡って、

そういった血統の「機械的ではない部分」、

ものがたりを元に血統を解説して、

血統のポイントやドラマ性を皆さまに知っていただけるような記事を書いていきたいと考えています。

 

さて、第1回目はすでにかなり有名な話ですが、

サラブレッドの三大始祖」のお話です。

三大始祖というのは「ダーレーアラビアン(Darley Arabian1700年ごろ)」、「ゴドルフィンアラビアンGodolphin Arabian1724年ごろ)」、「バイアリータークByerley Turk1679年ごろ)」

という3頭のサラブレッドの事です。

「現存している世界のサラブレッドすべての父系を辿っていくと、

必ずこの3頭のいずれかに行きつく」という事実があります。

いかに競走馬の血統というものは、

凄まじく狭い世界の中で発展と淘汰を繰り返されてきたものか、

ということが分かりますね。

 

まあ、これは現代の競馬を観戦したり予想したりするうえで直接的な関係はない話なのですが、

「競走馬の血統とはいかなるものか」という点を理解するには、

絶対に知っておいたほうがいい話なので、

第1回目として重要なポイントを抜粋して記載していきますね。

 

※なお、競争馬の馬名に関しては、読みやすく覚えやすいようにすべてカタカナ表記とします。

 

ダーレーアラビアン(推定1700年生まれ)

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ダーレーアラビアン」という名は、

「ダーレー(家)」の所有である「アラブ馬」という意味です。

※三大始祖はその系統の真偽に関して諸説ありますが、ここではそれぞれの名前の通りの系統だったという事で記載します。

 

サラブレッドの三大始祖、とありますが、

実はすでに現在の競走馬の父系の90%以上は、

このダーレーアラビアンの系統となっています。

 

ダーレーアラビアンの5代目の子孫に「エクリプス(Eclipse1764)」という競走馬がいたのですが、

そのエクリプスを介してダーレーアラビアンの父系は発展しました。

その為ダーレーアラビアン系=エクリプス系」とも言われています。

 

第2回以降で取り上げていく予定ですが、

ダーレーアラビアン系=エクリプス系は、

後に世界で爆発的な血の拡大と発展を成し遂げる偉大な子孫たちによって、

現在の世界のサラブレッドの主流父系の始祖の座を確固たるものにしています。

 

セントサイモン系→プリンスキロ系、リボー系

ゲインズボロー系→ハイペリオン

といったサラブレッドの底力の源泉となっているライン

●ファラリス系→ファロス系→ネアルコ系→ノーザンダンサー系、ナスルーラ系、ロイヤルチャージャー系

●ファラリス系→シックル系→ネイティヴダンサー系→ミスタープロスペクター

といった現在のサラブレッドの超主流ライン

 

こういった現在のサラブレッドの主流父系ラインは、

全てダーレーアラビアン→エクリプスが元となってそれぞれ発展を遂げてきたのです。

 

ゴドルフィンアラビアン(推定1724年生まれ)

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この馬の元々の呼び名は不明ですが、

最後の所有者だったフランシス・ゴドルフィンの名をとってゴドルフィンアラビアンと呼ばれるようになった、

と言われています。

 

ゴドルフィンアラビアンは非常に気性が荒い馬だったという逸話が残っています。

しかし猫好きで、写真の右下にチョコンと描かれている親友の「グリマルキン」という猫にだけは、

唯一心を開いたと伝えられています。

 

ダーレーアラビアンと同じように、

ゴドルフィンアラビアン「マッチェム(Matchem1748)」という子孫を介して、

後世にその血を伝えています。

 

いまでも血統表でちらっと見かける事のある、

マンノウォー系→インテント系→インリアリティ

のラインが主で、系統の存続のカギを握っていると言えます。

 

ちなみに現在の世界のサラブレッドの父系では

ダーレーアラビアン系=エクリプス系」が圧倒的な優勢を誇っていると書きましたが、

そのエクリプスの母の父(ブルードメアサイアー)の父親がこのゴドルフィンアラビアンです。

それが自身の父系としての勢力を衰えさせてしまう(?)ことになるとは、

なんとも皮肉な話ですがね・・・

 

バイアリーターク(推定1680年生まれ)

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名前は「バイアリー」が所有する「トルコ馬」という意味です。

 

この系統は子孫の「ヘロド(Herod1758)」を通じて発展したので、

「ヘロド系」とも言われています。

 

バイアリータークは「ロバート・バイアリー大佐」という軍人の所有者で、

軍馬として活躍した経歴を持っている馬でした。

バイアリータークに関わる逸話として、

ロバートアイアリーが戦闘中に敵に包囲された際、

この馬の脚の速さのおかげで難なく脱出した話が残っています。

その他にも数々の武勲を立て、軍馬として非常に優秀な馬であったと言われています。

 

この系統も、残念ながら現在は父系としてはほとんど残っていません。

しかし、過去に素晴らしいサラブレッド、種牡馬を輩出してきたことは確かですし、

血統の奥底や母系に入り、今もなおその影響を伝えています。

 

ザテトラーク

芦毛の快速馬ザテトラークはその強烈なスピードを子孫たちに伝えました。

ジェベル系→アホヌーラ系、リュティエ系

は主にヨーロッパで活躍した系統です。

●マイバブー系→パーソロン系→メジロアサマメジロティターンメジロマックイーン

●マイバブー系→パーソロン系→シンボリルドルフトウカイテイオー

のラインは日本で一世を風靡しました。

 

 

偉大なサラブレッドが後世にその血を残せるかどうかは、

自分以上に優秀な後継がその後に誕生するかどうかにかかっているのですが、

そこには時代的な背景(その時代に求められる能力適正)や、

各地域の求められる適正とのマッチなど、

幾多の条件と偶然的要素が関わっています。

 

血統を考えるとき、

遥か過去までさかのぼって偉大なる祖先たちの血を眺めてみるのも良いですが、

また同時にその系統の数年後、数十年後の未来を見据えて想像を巡らせてみるのも、

特に長く付き合う一口馬主の出資馬を選ぶときなんかは、

良いのではないかな、と思うのです。

 

最後までご覧いただき有難うございました。

ではまた次回(^^)